近頃のIoTとかM2Mについて。

ここ数年、IoTという言葉はニュースなどで見かける機会が増え、急速に世の中に広まりました。では、M2Mについてはどうでしょうか。M2Mの概要を知ると、IoTとの違いがよくわからないという人が少なくないようです。両者は何が違っていて、何が共通しているのか、知っておきたい基本的なポイントについて解説します。
モノがインターネットにつながるIoT
IoTは「Internet of Things」の略で、日本語では「モノのインターネット」と訳されています。IoTは人間社会に存在するさまざまなモノ(物)がインターネットにつながり、相互通信し、遠隔操作やデータの自動収集、自動クラウド保存などが可能になる仕組みです。ここでいうモノとは「ありとあらゆるモノ」のことで、家電製品、家具、自動車、工場の機械、建造物など種類を問いません。
IoTでは基本的に、「データの収集」「データの蓄積」「データの分析」「課題解決・価値創造」という4つの構成要素を持つとされています。これらを整理すると、
モノに備えられたセンサーで情報を取得(センシング)する
インターネットを経由してデータをクラウドに蓄積する
蓄積されたデータをAI(人工知能)技術などを使って分析する
分析結果に応じてモノが何らかのアクションを起こす
4番目のアクションは「アクチュエート」と呼ばれます。アクチュエートはフィードバックに似た言葉で、AIなどが膨大なデータを分析した結果、モノに「次に求められる行動」を起こさせることを意味します。単にモノがインターネットにつながるだけではなく、収集、蓄積した情報を分析し、その結果を受けてモノが適切な動作をすることがIoTにおける重要なポイントとされています。


機械と機械がつながるM2M
では、M2Mとは何でしょうか。この用語は「Machine to Machine」の略で、機械と機械(モノとモノ)が直接ネットワークで通信し、データを交換する仕組みを意味します。IoTより以前からあった技術であり、日本では2001年から始まった総務省のユビキタスネットワーク社会の実現に向けた取り組みの中でも触れられています。
機械同士の相互通信を意味するM2Mは、すでに多種多様な分野で導入・活用されています。一般的な事例としては、エレベーターの遠隔監視、自動販売機の遠隔在庫管理、電力・ガスメーターの自動検針、高速道路の渋滞情報を知らせるVICS(道路交通情報通信システム)などが挙げられます。自動販売機の遠隔在庫管理では販売機内の在庫が少なくなると自動的にセンターにその情報が送られ、その情報をもとに配送計画が立てられて人が商品を補充します。
しかし、これらは機械が機械から情報を収集し、人間が活用している例です。今後注目され、広まるだろうとされているのは、機械が機械を制御するタイプのM2Mです。
例えば、ビル内の明るさや温度・湿度に関する情報を機械に備えられたセンサーが収集し、人の手を介さず自動的に最適な状態に保つ技術などがこれに該当します。また近い将来、実現するといわれる自動車の自動運転システムでも、自動車や道路上の機械装置が相互通信し、車間距離を保つ、緊急停止するなどの制御が行われます。自動販売機の在庫管理も、やがては無人自動車が商品を運び、補充作業を行うようになるかもしれません。
IoTとM2Mの違い
こうした概要を知ると、IoTとM2Mはほとんど同じではないかと思われるのではないでしょうか。しかし、この二つには以下のような違いがあります。
つながるものの違い
M2Mは、SIMによるインターネットによる通信の他、機械と機械が直接通信する場合も含まれます。これに対し、IoTではモノが“インターネットを通して”別の装置や設備、または人とつながることになります。
つながる方法の違い
インターネットにつながっていることを前提とするIoTと違って、M2Mはインターネットを介さないクローズドなネットワークや機械同士を直接有線でつなげることもあります。クローズドだとデータは特定のシステム内だけを行き来して完結するため、外に出ることはありません。
活用目的の違い
IoTの活用目的は、情報の収集・共有・活用などです。IoTによって収集されたビッグデータを分析することで、単一の用途だけでなく、新たな需要の掘り起こしや市場開拓のために活用したいといったときに適しています。
一方、M2Mの活用目的は、機械からの情報収集または機械の制御です。センサーによる正確な情報収集、情報をもとにした機械による機械の制御が必要な場合はM2Mが向いています。
ただし、IoTとM2Mを統合・融合させた仕組みも考えられています。生産ラインの高効率化をめざすインダストリー4.0やスマートファクトリーといった概念は、IoTやM2Mの技術を適宜、組み込んでいくことで実現される可能性が高いといえます。
IoTとM2Mはよく似ており、異なる部分もあるものの、モノと人間の新しい関係を構築していくという意味では共通性を持つ技術でもあります。今後のビジネスを展望する上で、両者の違いや共通点について理解していくことが重要です。