IPアドレスの種類
PCやスマートフォン、タブレット、ゲーム機、テレビ、サーバー、ルーターなど、インターネットに接続されている機器であれば、1台ごとを識別する番号が必要になります。その識別番号がIPアドレスで、インターネット上の住所や電話番号と同じようなものだと考えればわかりやすいでしょう。なお、IPとは「Internet Protocol」の略で、インターネット上でのデータ通信の方法を定めた規約という意味です。
IPアドレスは、動的IPアドレスと固定(静的)IPアドレスという、2つのタイプに分けられます。
動的IPアドレス
動的IPアドレスは、常に識別番号が変わっていくタイプのIPアドレスです。IPアドレスが変わるタイミングは、PCやルーターなどの機器を再起動してインターネットに接続し直したときのほか、機器を使用している途中でも切り替わることがあります。
ただし、IPアドレスが変わるといっても、Webサイトを閲覧したり、メールを送受信したりといった用途ではまったく影響ありません。
<参考>法人向けOCNの動的サービス OCN for VPNライト
固定(静的)IPアドレス
固定IPアドレスは、ISP(プロバイダー)側から一度割り振られた識別番号がずっと変わらないタイプのIPアドレスです。
この固定IPアドレスが必要となるシーンは、外部から何らかのアクセスがある場合です。例えば、Webサイトを公開していて外部からアクセスがある場合、WebサーバーのIPアドレスが変わってしまうと閲覧できなくなってしまいます。また、ファイルサーバーのIPアドレスが変わると、外出先からファイルサーバー内のファイルを取り出すことができなくなります。
このように、企業がコンピューターネットワークを使って事業を行うためには、固定IPアドレスはなくてはならないものなのです。
なお、IPアドレスを割り振ることができるのは契約しているISP側ですが、IPアドレスの使い回しができる動的IPアドレスのほうが安価なサービスとして提供されています。ISPとの基本的な契約は動的IPアドレスとなり、固定IPアドレスはオプション契約として提供されています。
・自社だけの住所=固定IPアドレス
固定IPアドレスで何ができる?
固定IPアドレスを取得した場合にできることは、Webサイトの公開や、社外からのファイルサーバーへのアクセスなどです。しかし、それだけではなく、さまざまな使い方があります。
例えば、監視カメラや防犯カメラの遠隔監視ができるようになります。動的IPアドレスでも遠隔監視は可能ですが、何らかの理由で電源が一度落ちてしまったり、ISP側のメンテナンスなどでインターネットへの接続が一時中断したりということがあると、監視カメラや防犯カメラにアクセスできなくなります。固定IPアドレスを取得していれば、ネットワークの一時中断があっても、再開時にそのまま利用することが可能です。
また、クラウドサービスの利用時にセキュリティの認証精度を高めたい場合にも、固定IPアドレスは最適です。クラウドサービスを利用するときには、IDとパスワードによってユーザー認証が行われます。それらの情報が漏えいした場合、リスクを低減するために端末制限(アクセス制限)をかけることがあります。端末制限とは、指定されているIPアドレス以外からのアクセスを遮断する方法です。しかし、IPアドレスが常に変わっていく動的IPアドレスでは端末の特定ができないため、固定IPアドレスが必要となるわけです。
端末制限は、社員のプライベートな端末やインターネットカフェの端末など、指定外の端末からは契約しているクラウドサービスへのアクセスができなくなるということでもあります。そのため、全般的なセキュリティの強化にもつながります。
固定IPアドレスならVPNも構築できる
また、固定IPアドレスを取得することで、「VPN」(バーチャル・プライベート・ネットワーク:仮想専用線)も構築できるようになります。VPNとは、仮想的な通信で、第三者がアクセスできない閉鎖的でプライベートなネットワークのことです。
VPNを構築するには、VPNを構築したい各拠点にVPN専用のルーターを用意して、本社の固定IPアドレスを入力します。これによって、ルーターが固定IPアドレスのある本社へとつながり、VPNが構築されます。
VPNが構築されると、本社と各拠点の社内LANを統合して、1つのネットワークとして使えるようになります。そうして、互いのネットワークにつながったPCやサーバー内のデータを自由に取り出せるようになります。また、ノートPCやタブレットにVPNの設定を行っておけば、外出先からでも同じオフィスにいるかのようにVPNネットワーク内のデータにアクセスできます。
IPoE接続でも固定IPアドレスが使用可能に
現在では、IPoE方式でも固定IPアドレスが使えるようになり、注目を浴びています。
IPoE方式とは、社内ネットワークの標準であるイーサネットを通じて、直接インターネットに接続するインターネット接続方式です。従来のPPPoE方式は、電話回線を前提とした技術をイーサネットに応用していましたが、IPoE方式では最初からイーサネットを用いる前提で考えられています。そのため、PPPoEのように専用の通信機器を必要とせず、VNE(通信事業者)を介してシンプルにインターネットに接続できます。
固定IPとは
IPアドレスは、インターネットを行う際には必要不可欠な要素で、123.456.7.89といった数字で表示されています。モバイルルーターを介してネットに接続する場合でも、自宅の光通信を経由して接続する場合にも、IPアドレスは必須です。これはネットに接続する際の窓口とか住所といった意味があり、固定IPというのは、ネットに接続する際に毎回同じIPアドレスを利用することになります。
例えば、郵便配達の人は毎日、郵便を特定の住所に配達するために街を走り回っています。そして住民は、自宅の前に住所という受け取り窓口を持つことで、自分あての郵便を受け取ることが可能となります。もしも住所というシステムがなければ、自分宛ての郵便があっても郵便配達人は届けることができないので、自宅の前を素通りしてしまうでしょう。自分はここにいますよ、と知らせる役割をしているのが住所なのです。固定IPは、ネット世界においては住所の役割りをしています。
グローバルIPアドレス
IPアドレスは、大きく分類するとグローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスに分けることができます。このうち、グローバルIPアドレスというのは、ネットに接続する際に割り振られるもので、各家庭のルーターではなく、それを経由してネットに接続しているパソコンごとに割り振られる認識番号となります。認識番号なので、世界中にそのグローバルIPアドレスは一つしかないわけですが、グローバルIPアドレスも、ユーザーが世界中のどこからネットにアクセスしているのかを表す窓口や住所みたいなものだと考えると良いでしょう。
グローバルIPアドレスは、プロバイダを契約すると、プロバイダから割り振られるシステムとなっています。プロバイダから割り振られているグローバルIPアドレスは必ずしも永久に変わらない固定IPアドレスというわけではなく、定期的に番号が変更される仕組みとなっています。具体的にどんなタイミングで変更されるかについては、プロバイダによって異なります。一般的には、IPアドレスが不足しているので利用しているユーザーに対して動的な割り振りを行っているとか、セキュリティ面を考慮して、固定IPアドレスへのハッキングを防ぐという目的で定期的に変更することが多いようです。
基本的にプロバイダから割り振られているグローバルIPアドレスは、固定IPではなく変動IPです。しかし、BIGLOBEやOCNなどのプロバイダによっては、追加料金を支払うことで固定IPを取得することも可能です。
プライベートIPアドレス
プライベートIPアドレスというのはローカルIPアドレスとも呼ばれていて、ルーターから先の接続機器に対して割り振られている認識番号ということになります。例えば、家庭にインターネット回線を引き込むと、そのルーターにはグローバルIPアドレスが割り振られます。しかし、そのルーターに接続している家庭内のパソコンなどの一つ一つを認識するのは、グローバルIPだけではなくて、ローカルな接続を管理して認識するプライベートIPアドレスの役割りとなるのです。
家庭内で使用するパソコンからネットに接続したい場合には、まずパソコンからルーターに接続します。そうすると、ルーターがネットに接続要求を出してグローバルIPアドレスを取得した上で、接続しようとした特定のパソコンに対してレスポンスを返すという仕組みとなっています。こうしたやり取りは高速で行われているので、私達人間にとっては一瞬のことなのですが、ルーターは短時間の間にたくさんの役割りをこなしているのです。
ルーターは、グローバルIPアドレスと共にプライベートIPアドレスも同時に管理しています。パソコンからルーターへ接続する際には、ルーターはプライベートIPアドレスを使ってそのパソコンを認識し、瞬時に切り替えたうえでグローバルIPアドレスを使ってネットへ接続しているのです。そして、ネットからのレスポンスを受け取る際にはグローバルIPアドレスを用い、それをパソコンに届ける際にはプライベートIPアドレスで認識するという仕組みとなります。
固定IPの事例
IPアドレスが変動IPではなく固定IPだと、ニーズによってはとても使い勝手がよくなります。ただネットに接続をしてメールをチェックしたりWebや動画を閲覧するという使い方なら、あえて利用料金が高い固定IPを契約する必要はないでしょう。しかし、テレビ会議をする必要のある法人や、遠隔でパソコン操作をしなければいけない場合などには、固定IPを持っていることが必要最低条件となります。